子どもの褒め方、叱り方① 山浦一保(立命館大学スポーツ科学部准教授)
人が集まってくることが始まりであり、
人が一緒にいることで進歩があり、
人が一緒に働くことが成功をもたらす。
ヘンリー・フォード(フォード・モーター創始者)の言葉
チームや組織は一人ひとりから支えられたものであり、その人達が一緒に活き活きと活動できる条件が整ったとき、「個人」の成長と「チーム」の発展があると言っている。
スポーツもまた、一人ひとりが身体・心理・技術の面で成長し、競争と協力を繰り返しながら、チーム力を培い、目標を実現していく活動。
しかし、残念なことに、それを実現するために必要な指導者の力量や実践(それを支える周囲・環境との調整)が不足しているせいで、スポーツを含めたほとんどの組織のあらゆるポジションにBad指導者が存在し、その比率は75%にものぼるという海外の論文もある。
加えて、自分がBad指導者であるはずがないと信じて疑わない指導者も数多く存在する。
スポーツの指導者は、活動を通して子どもが望む姿の実現や目標の達成へと「導き」「支える」ために存在する。
そのために、指導者はさまざまに工夫を凝らしたコミュニケーションを用いて子どもの心を惹きつけつつ刺激を与え、心身にとって発達上必要な部分には変化を、獲得した技術やコツには定着をもたらしていく。
私たちがよく耳にするリーダーシップ、あるいはコーチングとは、このように子どもの夢を実現させるために行われるコミュニケーションのことを指す。
優れた指導者の基本条件は、子どもや社会に生かされている自分を深く意識できること。
このことを改めて認識してみるだけで、何が子どもに受け入れられ、スポーツの魅力が伝わりやすくなるのかという視点が生まれ、指導者としての関わり方を点検することもできる。
お互いの想い、その熱をどう伝えあうか。
その温度が同じくらいになった時、ハーモニーが生まれまる。
これが本来の「共有」の状態。
コミュニケーションの原点。
指導者は、子ども、保護者とのトライアングルのなかでお互いの目標やニーズの理解を促し会えるようにファシリテートすること(相互理解をサポートする行為)が期待される。
しかし、実際には曖昧なままに指導しているのが現状。
例えば、勝つことを期待する保護者がいて、それだけがスポーツの醍醐味ではないと思う指導者との関係があるかもしれない。
このようなとき、優れた指導者は、こうした相互理解を深めるべき事柄を避けることなく、子どもや保護者にオープンに語ってもらう時間を見つけ、その内容を聞いたうえでフィードバックを行なっている。
優れた指導者はさらに、「伝える」ことと「伝わる」ことを区別して対応している。
なぜなら、これらがズレることをとてもよく認識しているからだ。
上達の喜びを感じられる指導(授業)
喜びが向上心につながる